レジリエンス教育とは? 子どものレジリエンスを育む家庭環境とは?

2022年11月3日

 

子どものレジリエンス教育とは何?

 
レジリエンスとは、折れない心を持ち、気持ちが落ち込んでも回復できる健全な心理状態を示します。心理学的には、「レジリエンスとは、状況に対応する方法をコントロールしたり、課題や逆境から立ち直ったりする能力のこと」と言われます。
 
レジリエンスは学習することができるスキルであることがわかっています。レジリエンスを学ぶには、遅すぎることも早すぎることもありません。子どもでも学ぶことができ、大人になってからでも有用なスキルとなります。
 
この記事では、子供の折れない心を育むレジリエンス教育とは何か、子どものレジリエンスに影響を与える家族との関係や家庭環境について、わかりやすく解説します。


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レジリエンスはなぜ子どもに重要なのか?

子どもが今後長い人生を歩む上では、逆境や困難を避けることはできません。どの年代でも独自の問題があります。実際、今日の若者が直面してい不安やプレッシャーは並外れたものであり、世の中は先が見えにくく不透明になっています。親が歩んできたような人生を、子どもが歩む保証はできません。
 
そのため、子どものうちからレジリエンスを育てることは、逆境に直面しても健全に成長できる心理的資源となるのです。この考え方は、子どもの前向きな育成と幸せを願う親や教師にとって最も重要なものです。


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「つまずく」ことが多い子どもに必要なレジリエンス

 
日常的なシーンで、子どもが「つまずく」場面は少なくありません。
 

  • テストやスポーツの成績が悪く、気持ちが落ち込んでクヨクヨしている。
  • 理由もなくイライラし、友達にからかわれるとキレてケンカ寸前になる。
  • 何かチャレンジする場面で「自分には無理」と消極的にあきらめてしまう。
  • 友達や兄弟と自分を比べて自信をなくし、「どうせ私なんて」とスネてしまう。
  • 習い事で思い通りにいかないと、やる気をなくし「やめる」と言う。

 
一度失敗すると、「次もうまくいかない」と心配してしまい、一人で抱え込み、誰にも相談できません。このような「つまずき」を体験する子どもは多くいます。
 
今どきの子どもはストレスを抱えながら生活しています。思い通りにならずに「つまずく」ことも多いようです。だからこそ、レジリエンスが必要となります。

子どものレジリエンスに必要な3つの資源

11カ国から参加者を集めて行われた子どものレジリエンスに関する大規模な研究である「国際レジリエンス・プロジェクト」(Yates and Masten, 2012)では、子どものレジリエンスにとっては3つの資源が重要であるとデータに基づいた結論が出されました。
 

資源1「I HAVE」

これは、レジリエンスを促進する外部の支援や資源を指します。

資源2「I AM」

感情、態度、信念など、レジリエンスを促進する内的資質を指します。

資源2「I CAN」 

これは、レジリエンスを促進する社会的スキルや対人関係スキルのことです。
 
このようにレジリエンスを枠組み化することは、その子の主な強さの源泉の性質と程度を明らかにするのに役立ちます。たとえば、その子には、相談できる思いやりのある大人がいるかどうか。将来に対して楽観的で、自分の技術に自信を持っているか。また、子どもは質の高い友人関係を築くことができるか。
 
では、親として、これらの貴重な資質を最も強化するような環境をどのように提供すればよいのでしょうか。

子どものレジリエンスが育つ3つの環境とは?

研究によると(Blaustein & Kinniburgh, 2018)、子どものレジリエンスを促進する領域固有の資質は以下のとおりであることがわかります。
 

個人/子どもの内面領域

知能、快活な気質、楽観的な見通し、問題解決能力、自尊心、自己効力感、感情の柔軟性、アクティブなライフスタイル、感情のコントロール、ユーモア、自律性、共感性。
 

社会的/家族的領域

乳児の養育者への確実な愛着、暖かく協力的な両親、両親の調和、協力的な大人との向社会的結合、有意義な仲間との友情、健全な兄弟関係、社会的能力、協力的学習能力、助けを求める能力、両親の監督、効果的な育児スキルなど。
 

文脈的/環境的領域

安全な地域、質の高い学校、地域社会との親密さ、放課後プログラムの利用、協力的な大家族、学校での成功体験、価値ある社会的役割(例:仕事)、前向きな指導者、信仰に基づくまたはその他の有意義な地域社会の一員。
 
1つ目の領域は子供自身に関するものですが、2つ目と3つ目の領域は、子どものレジリエンスを育てるために、親が作り出すことができる環境となります。
 
レジリエンスの高い子どもを取り巻く環境の特徴は次の3つにまとめられます。

1)安定した家庭での親子関係

家族同志のコミュニケーションが明快で、親子、夫婦の間で感情の表現をオープンにできることが一つ目です。
 
夫婦が対等の関係にあり、何か問題があっても家族一丸となって前向きな未来を信じて物事に取り組むことができることも、子どものレジリエンスを育む家庭環境の特徴です。

2)ロールモデルとしての両親

お手本としての親の役割も重要な外的要因です。子どもは自分が見たものを手本にします。家族である親は、子どもにとっての最も身近なお手本です。
 
困難に出会っても前向きに対処するパパやママの姿は、子どもがレジリエンスを身につける上で最高のロールモデルとなります。そして親の姿を通して学んだ体験は、子どもに「自分でもできる!」という自信(自己効力感)をつけさせます。
 
ですから、親が、プレッシャーに打ち勝つことのできる、強くて有能なロールモデルとして子供に見せれば、レジリエンスの高い子供を育てられる可能性が高くなります。
 
心理学の研究によると、わずか2歳の子どもでも、親の口癖や態度、さらには思考スタイルを真似る(モデリングする)ことがわかっています。
 
とくに悲観的な口癖が多い母親の影響を受けると、子どもの考え方もネガティブになりがちです。親は子どもの心理に大きな影響を与えるため、できるかぎり良いお手本としてありたいものです。
 
子どもにとって親がお手本になるには、自分の人生の中でレジリエンスを発揮した体験について、子供たちに物語ることが有益です。困難があっても「なんとか乗り越えられる」と楽観的にとらえ、柔軟に適応して、課題を克服したような体験談は、将来に子どもが逆境に直面したときに見習うべきレジリエンスの貴重な教訓となります。

3)学校環境

子どもにとって生活の大半を占める学校の環境も、レジリエンスを形成する大切な外的要因となります。
 
子どもは学校生活において、成功や失敗の体験を積み重ねます。同級生を通じて人間関係が生まれ、同じ年代のグループができます。その中で自分の立ち位置を形成し、集団の中で認められる経験をします。そのすべてがレジリエンスの向上につながるのです。
 
親としては、子どもの学校選びは大切な仕事だといえます。学力を重視して学校を選ぶこともいいのですが、その学校が子どものレジリエンスを育てる上で適切なサポート環境が整っているのかについても確認しておきたいものです。

レジリエンスキッズを育てる7つのコツ

これらの環境に加え、親が子どものレジリエンスを促進するためには以下の7つの子育てのコツが提唱されています (Brooks and Goldstein (2003))。

 

  1. 共感性を育む。子どもが共感性を育めるように、他人が直面している苦労を真剣に考え、イメージする方法を教えます。
  2. 話を聞く。単に話を聞くだけでなく、子どもの話に真に耳を傾けていると感じられるようにする。
  3. 子どものありのままの姿を受け止める。子どもが望まない方向に押しやらないで、その子らしさを大切にしましょう。
  4. 長所を見極める。子供の得意なことを見つけ、励まし、サポートする。
  5. やり直しをする。失敗を学習経験としてとらえ、次回はもっとうまくできるようにする。
  6. 責任感を育てる。このことは、自尊心と自己効力感を高めることになります。意義のある参加を提供する。子どもが本当に好きな活動に参加する機会を与えましょう。
  7. 問題解決を教える。問題に対処する方法を示し、模範を示して励ます。

まとめ

子どものレジリエンスを育む家庭の在り方について解説してきました。

 
レジリエンスの高い子を育てるには、

  1. 「安定した家庭」
  2. 「お手本としての親」
  3. 「学校環境」

の3つが大切な外的な要因となるといえます。
 

本人の努力でレジリエンスを学び高めることもできますが、子どもにとっては家族がレジリエンスを育む家庭環境を整える責任を持つ環境も大切であると言えます。

本の紹介「親子で育てる折れない心」〜レジリエンスキッズの育て方


参考文献

  • Yates, T. & Masten, A. (2012). Fostering the future: Resilience theory and the practice of positive psychology.
  • 『つよい子を育てるこころのワクチン』マーティン・セリグマン、他(ダイヤモンド社)
  • Blaustein, M. & Kinniburgh, K. (2018). Treating traumatic stress in children and adolescents, second edition: How to foster resilience through attachment, self-regulation, and competency. Guilford Publications. Retrieved from https://www.guilford.com/books/Treating-Traumatic-Stress-in-Children-and-Adolescents/Blaustein-Kinniburgh/9781462537044/prior-edition
  • Brooks, R. & Goldstein, S. (2001). Raising resilient children: Fostering strength, hope, and optimism in your child. Lincolnwood, IL: Contemporary Books.

久世浩司 

ポジティブサイコロジースクール代表
応用ポジティブ心理学準修士(GDAPP)
認定レジリエンス マスタートレーナー
 
慶應義塾大学卒業後、P&Gに入社。その後、社会人向けスクールを設立し、レジリエンス研修の認知向上と講師の育成に従事。NHK「クローズアップ現代」、関西テレビ『スーパーニュースアンカー』でも取り上げられた。レジリエンスに関する著書、多数。累計発行部数は20万部以上。
 

主な著書
『「レジリエンス」の鍛え方』
『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』
『なぜ、一流になる人は「根拠なき自信」を持っているのか?』
『リーダーのための「レジリエンス」入門』
『なぜ、一流の人は不安でも強気でいられるのか?』
『親子で育てる折れない心』
『仕事で成長する人は、なぜ不安を転機に変えられるのか?』
『マンガでやさしくわかるレジリエンス』
『図解 なぜ超一流の人は打たれ強いのか?』
『成功する人だけがもつ「一流のレジリエンス」』
『眠れる才能を引き出す技術』
『一流の人なら身につけているメンタルの磨き方』
『「チーム」で働く人の教科書』

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