レジリエンスとは?

精神的回復力に関する心理学

2022/11/3
 
レジリエンスは、ストレスが増加し、VUCAと呼ばれる変化やリスクが多い企業環境で、社員が持つべき能力として人事・研修の領域で注目を集めている用語です。
 
タンポポ
この記事では、レジリエンスとは何か、社員の精神的回復力であるレジリエンスを向上するためには何が必要か、自分のストレス耐性の能力を改善する研修は何か、といったトピックスを心理学の研究をベースにわかりやすく解説します。

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レジリエンスの定義

レジリエンスは主に心理学の分野で欧米を中心に30年以上研究されてきました。言葉の意味としては「精神的回復力」や「復元力」を示します。人事の領域では、「レジリエンス力の高い人」と社員の能力を表す用語として使われます。また業績の回復力が早い企業は「組織レジリエンスが強い会社」と言われることもあります。さらにSDGsが注目されている現在では、災害に対する強靭さとして「国家のレジリエンス向上」という使い方もされています。
 
レジリエンスにはさまざまな定義があります。心理学の論文では、レジリエンスの定義が100以上伝えられています。私はレジリエンスに関する本を数多く著し、講演会や研修で社会人に向けてレジリエンスを教える機会がありますが、レジリエンスとは何かを説明するときに、世界最大規模の心理学系団体である全米心理学会における定義を引用しています。
 

『レジリエンスとは、家族や人間関係の問題、深刻な健康問題、職場や経済的なストレスなど、逆境、トラウマ、悲劇、脅威、重大なストレスに直面しても、適切に適応するプロセス。困難な体験から「立ち直る」ことを意味する

 
また、他の心理学者は以下のようにレジリエンスを定義しています。
 

「レジリエンスとは、状況に対応する方法をコントロールしたり、課題や逆境から立ち直ったりする能力のこと」(Boniwell, 2009)

 

「逆境、葛藤、失敗、あるいは前向きな出来事、進歩、責任の増大から立ち直るための開発可能な能力」(Luthans, 2002a)

 

「逆境・挫折・不運からの立ち直り力」(Ledesma, 2014)

 
つまり、レジリエンスとは、困難な体験から回復することを意味します。研究によれば、レジリエンスは人々が共通して有しているものであることとされています。9.11のテロ事件や3.11の東日本大震災から立ち上がった人々の姿がそれを物語っています。


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なぜレジリエンスが職場で大切か?

レジリエンスは、人類が生き残るための鍵に根ざした重要なライフスキルです。では、なぜレジリエンスは職場で働く人々にとっても大切なのでしょうか?
 

ストレスや燃え尽き症候群の対処

職場にはストレスがつきものです。仕事におけるストレスは、個人とパフォーマンスの結果に影響を与えます。さらに、職場のストレスは、高レベルのうつ病や不安症、燃え尽き症候群と相関しています。
 
燃え尽き症候群バーンアウトは、生産的にも経済的にも職場に大きな打撃を与えます。バーンアウトは、欠勤率の増加や生産性の低下と関連しており、それが従業員に与える悪影響は言うまでもありません。
 
しかし、心理的に回復力のあるレジリエンスの高い従業員は、ストレスにうまく対処でき、「燃え尽き症候群」になる可能性も低くなります。これは明らかに、会社にとって有益なことです。

レジリエンスは習得が可能

レジリエンスが強いことは、困難や苦悩を体験しないというわけではありません。逆境に直面すれば、感情的な痛みは感じられます。レジリエンスとは、その逆境をいかに捉え、対応するかなのです。レジリエンスとは、ストレスや逆境を体験した時に、内面化され適用される学習行動であるとも言えます。
 
実際、研究によると、レジリエンスは、直面する逆境をどう解釈するかによって形成されることが分かっています (Yeager & Dweck, 2012)。つまり、レジリエンスは、純粋に私たちの特性や周囲の環境によるものではなく、改善、開発、育成することができるのです (Kim-Cohen, 2007)。
 
別の言い方をすれば、私たちはレジリエンスを学び、教えることができるのです。レジリエンス研修は、そのための1つの有効な方法です。
 



職場でのレジリエンス トレーニングが有効

 
もともとレジリエンスは人生で危機や悲しい出来事を経験した人に向けた療法的なアプローチが中心でした。心理療法やカウンセリングの領域で主に研究・応用されていました。
 
それがうつ病の若年化の問題に直面した学校での解決策の一つとして、レジリエンス教育をうつ病の予防策として使われるようになりました。さらには、メンタルヘルスが重要になった職場の領域でも注目を浴び始めたのです。
 
レジリエンスを高めるには、職場のトレーニングが効果的であることが分かっています。レジリエンス研修がもたらすポジティブな影響を裏付ける研究結果があります。
 

職場でのレジリエンス研修の調査

Robertsonらは、オンライン研修、グループベースの研修、1対1の研修、グループベースと1対1の研修の組み合わせなど、さまざまな形態でのレジリエンス研修の効果を調査しました。その結果、メンタルヘルスと主観的ウェルビーイングにポジティブな影響を与えることが分かっています。メンタルヘルスと主観的幸福度の要素(ストレス、うつ、不安、ネガティブな気分・影響・感情など)に対して特に有効であることを明らかにしました(Robertson et all, 2015)。


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職域におけるハーディネスの研究

 
S. MaddiとD. Khoshaba (2006)は、12年にわたり、米国の大手通信会社の従業員を対象に、調査を行いました。当時の会社は変化が激しく、雇用も危うい状態でした。実際、研究が行われた12年の間に、従業員のほぼ50%が職を失い、3分の2が大きなストレスとなるライフイベント(離婚、うつや不安などの精神衛生上の問題、心臓発作など)を経験していたのです。
 
それにもかかわらず、3分の1の従業員は、直面した途方もない困難を乗り越えることができました。調査した人の中には、その会社での仕事を維持した社員の一人はトップに上り詰めました。また、不運にも職を失った社員は、自分の会社を設立したり、他の会社で重要な仕事をすることになったのでした。
 

ハーディネスを持つ人材の3つのC

この研究は「ハーディネス」というストレスフルな状況に対しての態度とスキルとしてまとめられました。レジリエンスの高い姿勢として以下の「3C」を挙げました。
 

  • Commitment(コミットメント)
  • Challenge(チャレンジ)
  • Control(コントロール)

 
コミットメントの姿勢があれば、撤退するよりも周りの人や出来事と関わり続けることができます。仕事に打ち込むことで、従業員は目の前の仕事に専念できるようになった。その結果、従業員は自分にとって何が起こっているのか、正確に理解することができるようになったのです。
 
そして、チャレンジの姿勢は、自分の運命を嘆くのではなく、ストレスを通して自分がどう成長できるかを発見しようとします
 
さらに、コントロールの姿勢は、あきらめるのではなく自分が関わっている結果に影響を与える努力を続けます。自分自身でコントロールできるという感覚を持つことで、変化に対して影響力のある行動をとることができるようになったのです。また、変化やストレスは人生の必然であると考えるようになりました。

セリグマンのレジリエンスの3Pモデル

ポジティブ心理学のレジリエンスの枠組みとして有名なのが、セリグマンの3Pモデルです。

この3つのP(personalization、pervasiveness、permanence)は、逆境に対して私たちが抱きがちな3つの感情的な反応を指しています。この3つの反応に対処することで、私たちはレジリエンスを高め、成長し、適応力を高め、困難にうまく対処できるようになるのです。

 

個人化(Personalization)

問題や失敗を内面化することとして最もよく表現される認知の歪みです。悪いことが起きたときに自分の責任を問うと、不必要に多くの責任を自分に負わせ、立ち直るのが難しくなります。
 

汎化性(Pervasiveness)

ネガティブな状況が人生のさまざまな領域に広がっていると思い込むことを示します。例えば、あるスポーツで試合に負けたことで、他のこともすべてうまくいかないと悲観的であると思い込んでしまうことです。この思い込みに対処するには、人生のすべての領域に影響を与えるわけではないことを認めることが役立ちます。その結果、より良い人生に向かって前進することができます。
 

永続性(Permanence)

悪い経験や出来事は、一過性のものではなく、これからもずっと続くと信じていることを指します。この永続性の思い込みが心の内面にあると、状況を改善するための努力をすることができず、今の状態からは二度と回復できないかのように感じてしまいます。
 

柔軟な捉え方が重要

これらの3つのPは、私たちの思考や思い込み、信念がどのように私たちの経験に影響を与えるかを理解するのに役立ちます。
 
レジリエンスを発揮し、前向きに適応するために状況をより柔軟に認識し捉えるスキルを身につけることで、私たちはより回復力が増し、人生の困難から立ち直ることを学び始めることができるのです。


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ペン・レジリエンス・プログラム(PRP)

セリグマン教授らはPRP(ペン・レジリエンス・プログラム)を学校教育向けに開発しました。このプログラムは、楽観性、自己効力感、問題解決、自己規制、柔軟性、感情認識、共感、強い人間関係の構築など、レジリエンスに関連する因子を高めることを目的としています。
ポジティブ心理学の中核研究である「VIA 人格的な強み」をベースとした「ストレングス・アプローチ」が採用されている点が、従来のストレス・コーピング系の研修との違いとされています。
 
PRPを基盤として、レジリエンス研修が社会人向けに開発され、企業だけでなく、米国陸軍などの組織に導入されました。

マスター・レジリエンス・トレーニング(MRT)

アメリカ陸軍のレジリエンス プログラムは、MRT(Master Resilience Training)と呼ばれています。MRTは、戦闘中と戦闘外の両方でレジリエンスを高めるための10日間のコースです。
 
米国陸軍は100万人規模の、全米で2番目に大きな組織(1番目はウォルマート)であるため、MRTは世界最大規模のレジリエンスを高めることを目的としたトレーニングであると言えます。

 
MRTは当初、うつ病予防を目的としたペン・レジリエンス・プログラムに端を発していました。このプログラムをすべての軍人とその家族が利用できるようにするため、陸軍当局はすべての兵士に展開しました。個人のレジリエンスとレディネスを高めるための、より積極的なアプローチも開発されました。
 

MRTの目的

MRTの参加者は、レジリエンスが理論上および実践上どのような意味を持つかを学びます。MRTでは、レジリエンスの概念自体の理解と共に、学んだスキルを使って課題に対処し、「立ち直る」ことの実践的スキルの習得が含まれています。

MRTを修了すると、兵士は苦難を乗り越え、課題を再評価するためのツールキットを手に入れることができます。MRTは、逆境を一過性のものや局地的なものであり、自分の努力でどうにかなるものと捉える考え方を強調しています

 

兵士が習得するレジリエンス スキル

MRTを通じて兵士は次の12のスキルを習得します。

目標設定
問題解決
良いものを狩る
思考の活性化
出来事と結果
エネルギー管理
思考の罠の回避
氷山の発見
物事を見通す
メンタルゲーム
リアルタイム レジリエンス
性格の強みの見極め
参照元:米国陸軍HP

 

主な学習項目

代表的なスキルが以下の3つです。

思考の罠を避ける
認知のゆがみやネガティブな捉え方を認識し識別することは、批判的思考を用いることで可能です。不適応な思考回路が存在する場合、それに挑戦し、より肯定的・現実的・合理的な思考パターンに置き換えることができます。

良いものを狩る

ネガティブバイアスに挑戦することを助け、認知再構築を促します。具体的には、兵士は毎日起こる良いことを積極的に思い出し感謝することで、ポジティブな感情を豊かにする方法を実践します。

リアルタイム・レジリエンス

MRTは、ネガティブな捉え方をストップし、現在の業務へのより良い集中を促す方法を教えます。たとえば、ネガティブな思考や感情を文章に書き出す演習を通して、兵士たちはストレスの高い出来事の心理的影響を最小限に抑え、頻繁に遭遇する問題を回避する方法を学びます。

ボニウェル博士のSPARKレジリエンス®︎

欧州では、『SPARKレジリエンス®︎』が英・イーストロンドン大学大学院のイローナ・ボニウェル博士らにより2009年に開発され、企業や学校教育において、欧州やアジア各国、日本でその研修が導入されました
 
SPARKは、ストレスの高い出来事に適応的に反応するプロセスを示す用語です。
 

  • S(ストレス) - 状況の明白な事実は何ですか?
  • P(捉え方)- 何が起こっているかをどう解釈しているか?
  • A(感情)- どのように感じていますか?
  • R  (反応) - あなたは何をしますか?
  • K(知識)- あなたの行動の結果は何ですか?

 
SPARKレジリエンス®️は、研究調査により、レジリエンス、自己肯定感、抑うつの低減などにポジティブな影響を与えることが確認されました。(Pluess & Boniwell, 2015; Pluess, Boniwell, Hefferon, & Tunariu, 2017).
 
また、コロナ禍で対面研修が受けられない時期に、オンライン研修に参加した180名を対象とした調査においては、研修参加グループとコントロールグループにおける研修実施前後の質問調査において、以下の結果が確認されました。

  • レジリエンスの増加
  • エンゲージメントの高まり
  • ポジティブ感情の向上
  • 意義感の増加
  • ストレス度の低減
  • ネガティブ感情の低下 

職場において、従業員を支援し、よりいきいきとし、レジリエンスとエンゲージメントの高い従業員を育成することが必要となっています。世界各地の企業において、SPARKレジリエンス®︎による研修が実施されることで、従業員のレジリエンス、ストレス耐性、エンゲージメントなどが高められています。


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グリットとレジリエンス

グリット(Grit)とは「超長期的な目標に対する関心と努力を持続する傾向のこと」と定義され、注目を集めている心理的資源です。レジリエンスと深く関係があります。
 
グリッドの主要研究者であるDuckworthら(2007)によると、グリットは生まれつき多くの人が持っていますが、経験によって発達する特性であると主張しています。
 
実際、博士号を取得しようとしていた彼女は、ある人々が他の人々よりも気骨があるように見えるという考え方に魅了されたことからこの研究が始まりました。数学の教師をしていた彼女は、IQスコアに関係なく、ある生徒が他の生徒よりも長期的な課題に取り組む能力を持っているように見えることに気づきました。

 

グリットは熱意に関わる

グリットとは、特定の目標に対する強い情熱です。そのため、ある分野では発揮できても、他の分野では発揮できないことがあります。例えば、マラソン選手になりたいという情熱を持ちながら、他の競技においても世界レベルになりたいという夢を追い求めることは困難なことです。
 

情熱と忍耐力

グリットとは、苦しくても、くじけそうになっても、一時的に失敗しても、目標に向かって一貫して努力を続けることです。その意味で、グリットが高い人は、情熱と忍耐力のレベルも高いと考えられます。

レジリエンスとは、苦労したり、挫折したり、失敗したりしても、立ち直る力のことです。自分を奮い立たせ、自分を取り戻し、目標達成のために再び動き出すことができる能力です。グリットにおける忍耐力と関係があるのです。


また、グリットと同じように、レジリエンスも人が身につけることができる特性です。困難な挑戦を乗り越えた経験により学習することが可能です。


グリットは、私たちを目標に向かわせるエンジンとも考えられます。ただ、そのためには継続する力が必要です。レジリエンスと、エンジンを動かし続けるためのオイルであるとも言えます。 

ビジネスリーダーとレジリエンス


経営者に読まれているハーバード・ ビジネス・レビュー誌では、シニアエディターのDiane Coutu(2002)が、「How Resilience Works」(レジリエンスがいかに活用されるか)というテーマで、企業組織のリーダーにおけるレジリエンスについての論文を表しました。
 
Dianeは、レジリエンスとは以下の3つの能力の組み合わせであると述べています。
 

1. 現実を直視する

絶望的な状況では、ポジティブに考えるよりも、現実を直視することが最善の対処法です。すぐに良くなると思っていると、状況がなかなか変わらなかったときに、エネルギーや希望を失ってしまうことがあります。
 
したがって、困難な状況においては、現実を直視し、受け入れることが、その間の苦難に耐えるためのより良い基盤を作ることになるでしょう。

 

2. 意味を探す

変えられない運命に直面しても、意味を見出すことができることがレジリエンスの核心です。人生の目的を持つことは、セリグマン教授が提唱する幸福のPERMAモデルにおける5つの柱の1つです。
 
社員が意味を見つけたり、創造したりすることを支援することは、レジリエンスを強化することになります。

 

3. 即興性

手元にあるものを使って状況に対処する能力は、逆境から立ち直る能力を強く予測させるものです。与えられた道具ではなく、目標に到達するための新しい方法を見つける即興能力が重要なのです。

リーダーは従業員の模範であり、即興で行動する能力が非常に重要です。

全米心理学会のレジリエンスを構築する10の方法

アメリカ心理学会は、レジリエンスを高める10の方法を提示しています。
 

  1. 社交的でない人は、もっと社交的になる(つまり、意図的に他人とつながる)ことが有効です。
  2. 経験した不利な出来事にどう対応するかをコントロールできるようになりましょう。
  3. ギリシャの哲学者ヘラクレイトスは、「人生において唯一不変なものは変化である」と言ったと言われています。それに慣れましょう。目標が達成不可能になり、放棄しなければならないこともある。変えられないものを受け入れることができないのは、無駄な追求です。
  4. 目標に「カイゼン」の原則を適用する。より大きな、より長期的な目標に関連する、絶対的に小さな要素から始める。ウォルト・ディズニーの有名な言葉に、「私たちは前進し続け、新しい扉を開き、新しいことをし続ける。なぜなら、私たちは好奇心が強く、好奇心が私たちを新しい道へと導き続けるからだ」というものがあります。
  5. 困難な状況に陥ったとき、決断することを約束する。気ままな行動は許されない。
  6. 嫌な経験で苦労したとき、私たちは自分自身について多くを学ぶことができます。人間関係はどうなったか?どのように我々は、強さや視点を得ている?
  7. 否定的なセルフトークを忘れてください。あなたは他の誰よりも自分自身を知っていることを信頼し、率直な意思決定を行うための知性と力を持っています。あなたは問題が発生したときに解決することができます。
  8. 悪いことは起こるものです。生涯の視点で考えてみてください。あなたが生まれた日から、あなたが死ぬと思う年齢まで、紙の上に線を引いてください。その線に沿って、人生の重要な出来事、プラスとマイナスをマークしてください。その紙の上に、あなたの現在の年齢を表す線を引きます。その線上に点を置いて、現在の逆境をマークします。あなたの人生の壮大な計画の中で、その点はどのくらい重要なのでしょうか?過去の出来事を振り返ったとき、それが今の人生に与える影響はどの程度でしょうか、あるいはどの程度でしょうか。
  9. 楽観主義を実践しましょう。これは、悪いことを否定しているのではありません。それは、良いことと、あなたの人生で可能なことを認めているのです。自己
  10. 思いやりを実践し、運動をし、新しいことを学び、笑いのある時間を過ごしましょう。 

メンタルタフネスとレジリエンスの違い

スポーツの世界では、試合に勝利し高い結果を出すためにはメンタルタフネスが重要だと負われています。しかし、メンタルタフネスは、必ずしもレジリエンスとは厳密に同じものではありません
 

メンタルタフネスとは?

メンタルタフネスは、心理学者のスザンヌ・コバサが1979年に行った経営者のストレスに関する研究で明らかにした性格特性である「メンタル・ハードネス」に近いと考えることができます。メンタルタフネスは、困難をどのように評価し、アプローチするかに影響を与える個人的特性を指します。特性であるメンタルタフネスは、ポジティブな状況にもネガティブな状況でも適用されます (Kobasa, S. C.,1979)
 
一方、レジリエンスは、より一般的に適応的なプロセスと考えられています。(前述の全米心理学会でのレジリエンスの定義を参照)また、レジリエンスは主に逆境に対処するために用いられる保護要因です。ポジティブな状況に対しては、この用語は使われません。

ポジティブ シンキングとレジリエンスの違い

「レジリエンスはポジティブシンキングと同じではないか?」という質問を受けることがあります。実際、レジリエンスの考え方とポジティブシンキングは異なります
 
ポジティブシンキングは、失敗やトラブルが起きたときに、現実から目をそらして「なんとかなるさ」と幻想的に将来を考えてしまうこと。つまり現実から逃避して、自分のいいように物事を解釈している状態です。「非現実的な楽観主義」といえます。
 
一方レジリエンスは、ネガティブ感情を否定していません。現実やネガティブな感情をいったん受け入れた上で、自分の思考と感情に対処していく力です。その点がポジティブシンキングと大きく違います。
 
レジリエンスが強い人は、ネガティブな感情をうまく整理したり、気晴らしをしたりして、次のチャレンジに向かって立ち直っていくのです。
 

◆ポジティブシンキングとの違い

・ポジティブシンキング→非現実的な楽観主義
・レジリエンス→ネガティブ感情を受け入れ、思考と感情に対処する力

 
ストレスを避けたいがために、ネガティブな感情を抱かないようにしようとする人もいますが、危険です。たとえば、上司からハラスメントを受けているのに我慢したり、理不尽なことに怒りを感じないようにしたりして、自分の感情に蓋をしてしまう人がいます。そうすると、感情が麻痺します。悩んでいないように見えても、ある日突然限界に達して、会社に行けなくなるというケースもあります。
 
ネガティブな感情を抱くこと自体は、悪いことではないのです。その感情に適切に対処することが大切なのです。


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まとめ

レジリエンスとは、ストレスや現在および将来のネガティブな出来事や状況に、適応的に対処する力であると言えます。また、VUCAと呼ばれる変化の激しい世の中で、変化に抵抗するのではなく柔軟に対応し、ネガティブな体験から立ち直る能力でもあります。生まれつきレジリエンスが高い人がいますが、学ぶことができるものでもあります。

レジリエンスに関する科学的研究は、過去20年間で8倍に増え、レジリエンスを促進する主な要因が特定されています。とくに職場においては、メンタルヘルスやストレスの課題を解決する方法として、従業員のレジリエンスを高める研修を導入することで、健全なメンタルを持つ個人・企業・社会を形成することが期待されます。

 

久世 浩司(ポジティブサイコロジースクール代表)

参考文献

  • Boniwell, I. & Ryan, L. (2009). SPARK Resilience: A teacher’s guide. London, UK: University of East London.
  • Cary L. Cooper, Jill Flint-Taylor. Building Resilience for Success: A Resource for Managers and Organizations
  • Coutu, D. L. (2002). How Resilience Works. Harvard Business Review, May, 1 – 8.
  • Kim-Cohen, J. (2007). Resilience and developmental psychopathology. Child and Adolescent Psychiatric Clinics of North America, 16, pp.271–283.
  • Kobasa, S. C. (1979). Stressful life events, personality, and health – Inquiry into hardiness. Journal of Personality and Social Psychology, 37(1), pp. 1–11.
  • Luthar, S. S., Cicchetti, D., & Becker, B. (2000). The construct of resilience: A critical evaluation and guidelines for future work. Child Development, 71(3), pp.543-562.
  • Ledesma, J. (2014). Conceptual frameworks and research models on resilience in leadership. Sage Open, 4(3), 1–8.
  • Maddi, S., & Khoshaba, D. (2005). Resilience at work: how to succeed no matter what life throws at you. New York: American Management Association.(邦訳「仕事ストレスで伸びる人の心理学」サルバトール・R・マッディ、デボラ・M・コシャバ)
  • Pluess, M., & Boniwell, I. (2015). Sensory-processing sensitivity predicts treatment response to a school-based depression prevention program: Evidence of vantage sensitivity. Personality and Individual Differences, 82, 40-45.
  • Pluess, M., Boniwell, I., Hefferon, K., & Tunariu, A.D. (2017). Preliminary Evaluation of a School-Based Resilience-Promoting Intervention in a High-Risk Population: Application of an Exploratory Two-Cohort Treatment/Control Design. PLoS ONE 12(5):e0177191
  • Robertson, I. T., Cooper, C. L., Sarkar, M., & Curran, T. (2015). Resilience training in the workplace from 2003 to 2014: A systematic review. Journal of Occupational and Organizational Psychology.
  • Seligman, M. (1990). Learned optimism. Pocket Books.
  • Yeager, D. S., & Dweck, C. S. (2012). Mindsets that promote resilience: When students believe that personal characteristics can be developed. Educational psychologist, 47(4), pp.302-314.

久世浩司 

ポジティブサイコロジースクール代表
応用ポジティブ心理学準修士(GDAPP)
認定レジリエンス マスタートレーナー
 
慶應義塾大学卒業後、P&Gに入社。その後、社会人向けスクールを設立し、レジリエンス研修の認知向上と講師の育成に従事。NHK「クローズアップ現代」、関西テレビ『スーパーニュースアンカー』でも取り上げられた。レジリエンスに関する著書、多数。累計発行部数は20万部以上。
 

主な著書
『「レジリエンス」の鍛え方』
『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』
『なぜ、一流になる人は「根拠なき自信」を持っているのか?』
『リーダーのための「レジリエンス」入門』
『なぜ、一流の人は不安でも強気でいられるのか?』
『親子で育てる折れない心』
『仕事で成長する人は、なぜ不安を転機に変えられるのか?』
『マンガでやさしくわかるレジリエンス』
『図解 なぜ超一流の人は打たれ強いのか?』
『成功する人だけがもつ「一流のレジリエンス」』
『眠れる才能を引き出す技術』
『一流の人なら身につけているメンタルの磨き方』
『「チーム」で働く人の教科書』


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