ポジティブ心理学の応用研究

 
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ポジティブリーダーシップとは?

ポジティブ心理学のリーダー教育への応用

 

 

米国ビジネススクールで教育されるポジティブリーダーたち

ポジティブ心理学のリーダーシップ開発や次世代リーダーの育成に応用可能な研究は、主に以下の欧米の一流大学機関でなされています。

  • 米ミシガン大学 ロス ビジネススクール
  • 米クレアモント大学院 クォリティ オブ ライフ研究所
  • 米ハーバード大学メディカルスクール付属 コーチング研究所
  • 米ケースウエスタン大学 大学院
  • 英ケンブリッジ大学 ウェルビーイング研究所

 


ここでは、リーダーの育成に関連する海外の論文を中心に紹介いたします。
 


関連情報要約「ポジティブ・リーダーシップ」


組織における強みとしての徳性

 

強みとしての徳性研究「VIA分類法」の開発者で、ポジティブ心理学の創始者の一人である米・ミシガン大学のクリストファー・ピーターソン教授らの調査によれば、強みを活かすことは組織の生産性と成長の源泉として重要であると考えられます。
徳性とは、善いことや正しいことを純粋に追い求める人としての資質であると定義づけられます。その徳性が現代組織において重要なのは、それが経営者や従業員を正しく導くからであり、正しいことをすることで生産性や利益に結びつくからだとピーターソン教授は考えます。
このようにピーターソン教授は常に根拠に基づいた正論を伝えるポジティブ心理学者であり、その賢明な言葉は注目に値します。

 
参考文献: Peterson, C. and Park, N. (2006), Character strengths in organizations. Journal of Organizational Behavior, 27: 1149–1154. doi: 10.1002/job.398
 


従業員のエンゲージメント

 

「従業員のエンゲージメントが高いと、人材の採用にも有利で、人材の維持率も高く、離職率も低い」
エンゲージメント研究の第一人者である米・ギャラップ社のハーター博士は、大規模なメタ分析のデータをもとにこう結論づけます。
そして従業員のエンゲージメントを高めるには、自分の強みや才能が今の仕事で活かされていると感じるかどうかが鍵となります。実際、そう考える従業員は、エンゲージメントが他の従業員よりも2倍以上高く、離職率が大幅に低いことがわかっています。
また、エンゲージメント度は勤続年数の長い従業員や役職に就いていない従業員は比較的低いこともわかっています。国内の高齢化で従業員の平均年齢が高まり、管理職層のスリム化で役職のポストが減りつつある日本企業において直面する課題だと考えられます。
その打開策としては、「強みをベースとした人材育成によりエンゲージメントを底上げすることが有効だ」とハーター博士は結論づけています。

 
参考文献: Harter, J.K., & Blacksmith, N. (2010). Employee engagement and the psychology of joining, staying in, and leaving organizations. In P.A. Linley, S. Harrington, & N. Garcea (Eds.), Oxford handbook of positive psychology and work (pp. 121-130). Oxford: Oxford University Press.
 


熱意と仕事

 

人の仕事観は「ジョブ」「キャリア」「コーリング」の3種類に分類できる---。ポジティブ心理学の仕事・キャリアプランへの応用として有名な研究です。
そのうち「コーリング」の仕事観をもつ人は、自分の仕事に対して意味や意義を見いだしており、仕事の満足度や生産性が非常に高いことが統計上わかっています。
さらにピーターソン教授らの2000人を超える量的調査によれば、この「コーリング」タイプの人の共通点として、強みとしての徳性の一つである「熱意」が高いことがわかりました。
人生に対しての前向きな期待、バイタリティ、活力に関する「熱意」が、人材育成や採用において重要な属性になることが考えられます。

 
参考文献: Peterson, C., Park, N., Hall, N. and Seligman, M. E. P. (2009), Zest and work. Journal of Organizational Behavior, 30: 161–172. doi: 10.1002/job.584
 


ポジティブな発言と業績の関係

 

「ポジティブさとネガティブさの割合」。ロサダ博士が行った有名な研究です。
ロサダ博士は、60の異なる経営陣を会社の業績や社員からの360度フィードバックなどを元に「高業績チーム」と「低業績チーム」に分けました。その後経営会議などで発言内容を記録し、特別なソフトを使ってコード分析を行い、その結果「高業績チーム」にある有為な特徴を見いだしました。その一つがポジティブな言葉とネガティブな言葉の割合にあったのです。
具体的には、高業績チームではポジティブな発言がネガティブな発言の5.6倍以上あり、その反対に低業績チームでは否定的な発言が肯定的な発言の3倍もあったことがわかりました。
言葉以外にも企業の成長の源泉は様々なものがあると考えられますが、高成長を導く経営陣の属性としてポジティブなコミュニケーションが優位であることが証明された興味深い研究です。

 
参考文献: Losada, M. & Heaphy, E. 2004 The role of positivity and connectivity in the performance of business teams: a nonlinear dynamics model. Am. Behav. Sci. 47, 740–765.
 


ハイ クオリティ コネクション

 

ミシガン大学ロス ビジネススクールのダットン教授は、職域においてポジティブな関係性を築く「HQC(ハイクォリティ コネクション)」研究の第一人者です。
コネクションとは、心理学で「短時間での接触」を意味します。それには二種類あり、「高い質のコネクション(HQC)」と「低い質のコネクション(LQC)」に分けられます。一瞬の接触とはいえども、HQCを経験すると人はまるでエネルギーを与えられたかの様に元気づけられ、相手に対して信頼と敬意を生み出す効果があることがわかっています。
またHQCが豊かな職場は、従業員の意欲が高く、再起力もあり、学習する組織にもなりやすい。職場におけるつながりの希薄化が課題となっている現代日本では、ポジティブな関係性を形成するHQCは大切なスキルになると考えられます。

 
参考文献: Stephens JP, Heaphy E and Dutton JE (2011) High quality connections. In: Cameron K andSpreitzer G (eds) Oxford Handbook of Positive Organizational Scholarship. New York, NY:
Oxford University Press, forthcoming.
 


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