HAPPIER

幸福も成功も手にするシークレット・メソッド ハーバード大学人気No.1講義

タル・ベン シャハー (著)

ポジティブ心理学を(海外で)世間に知らしめた本

本書は海外でベストセラーとなった「HAPPIER」の翻訳書です。 本書も良書でありながら、(出版社や翻訳者には失礼ですが)国内ではあまり読まれていない書籍かもしれません。
 
著者のタル・ベン・シャハー博士は、イスラエルで育ち、ハーバード大学で教育を受け、組織行動論で心理学の博士号を取得した心理学者です。 現在は地元イスラエルに戻り、大学で教えながら世界各地で講演・研修に招かれています。
 
博士を有名にしたのは、何と言っても「ハーバード大学で当時一番人気だったポジティブ心理学を担当した」という事実です。本書にも書かれている通り、ポジティブ心理学の講義を始めた当初は受講生は数人で、教室では閑古鳥が鳴いていたそうです。しかしながら、口コミで評判を呼び(単位をとりやすいということもあったようです)、続々と生徒が集まり、結果として当時のハーバード大学の学部生の中で最人気の講義となりました。
 
「ハーバードの学生がなぜ幸せになる心理学を学ぶのか?」と全米、いや世界中で話題になり、さらには元全米心理学会会長のセリグマン教授からのサポートもあり、本書はベストセラーとなったわけです。
 
その意味では、本書はいわゆる「アメリカ有名大学講義本」のはしりでした。しかし、国内のブームの火付け役は、2010年のマイケル・サンデルの「正義:ハーバード大学白熱教室」であり、本書の発刊はそれに先駆けた2007年だったので、時期尚早だったのかもしれません。事実、シャハー博士の第二作目「Even Happier」は、日本語訳で「ハーバードの人生を変える授業」とタイトルを変更し、有名大学本ブームに乗り、見事ベストセラーになっています。
 
私は本書はシャハー博士の「幸せ」に関する「持論」と発展段階でのポジティブ心理学の「理論」が、バランスよくまとめられていると思います。博士自身のエピソードも豊富で、大学の先生が書いた本というよりも、読みやすい一般書にカテゴライズされます。シャハー博士は、研究者としてではなく、講演者と文筆家を自らの「コーリング」(天職)と捉えていたので、納得いけます。


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以前に、シャハー博士がハーバード大学で行ったポジティブ心理学の講義と同じ内容のプログラムをオンライン受講する機会がありました。12週間で$895(約9万円)とオンラインコースとしては決して安くはない料金でしたが、当時の私はポジティブ心理学の最新知識に「飢えていた」ので、熱心に視聴しました。たしか世界中から1,000人近い受講があったのを覚えています。すごい盛り上がりでした。(でも講義内容は、イローナ・ボニウェル博士のもののほうがかなり優れていたと個人的には思います)
 
さて、本書では、幸福度を高めるさまざまな考えと具体的な方法が語られています。心理学を勉強されている方にはやや浅い内容に思えるかもしれませんが、本書の対象読者は一般の方ですので、そこは差し引いて読むといいのではと思います。その中でも、私のお気に入りが「MPSプロセス」です。
 
これは博士の持論ですが、セリグマン教授の「幸福度を高める3つの生き方」や、ジェーン・ダットン博士の「ジョブクラフティング・エクササイズ」(職務を再構築して意欲を高める手法)ともつながる点があり、いい人生やいいキャリアを形成するために活用しやすいツールです。具体的には

  • M=Meaning(意義)
  • P=Pleasure(喜び)
  • S=Strengths(強み)

の三要素を把握し、キャリアデザインに活かす方法です。
 
自分のコーリング(天職)に気づくためにも、日常の仕事の目的やキャリアの方向性を確認する上でも、このようなツールを使ってリフレクション(振り返り)と自分のリソースの棚卸しをすることは、とくに人生やキャリアの節目においては有用だと考えます。
 
(当スクールのボニウェル博士は、「ポジティブ心理学コーチング」科目の中で、この方法に近いやり方で「幸福度を高めるコーチング」に活用しています)
 
その他にも、いい人生やいいキャリアを歩むためのヒントがたくさん含まれています。「お、これは」という気づきがあったときに、本書でときおり記されている「タイム・イン」を行うことをおすすめします。これは、マインドフルネスでよく使われている手法で、揺れ動く心を今ここに落ち着かせて、自分の内面を観察するテクニックです。新しい洞察が得られたときに、ストップして少し静かな時間をおいて、自分の中に浸透する間をもちながら読むと、人生にプラスになる読書時間となるのでおすすめです。

目次



1 幸せとは“究極の通貨”だ
・現在の利益と未来の利益
・幸せの正体
・究極の通貨
・幸せになるための目標設定の仕方
2 誰もが幸せになれる
・仕事、学習、人間関係のあり方
・「学ぶ幸せ」を習得する
・「働く幸せ」を味わい尽くす方法
・幸せな人間関係を築く秘訣
3 永遠の至福に向けて
・幸せブースター
・つかの間の喜びを超えて
・光り輝く勇気
・自己の利益と思いやり
・内なる賢者
・ゆっくり生きても充分間に合う
・幸せ革命
・永遠の幸福へ―これがすべてです


 

久世 浩司(ポジティブサイコロジースクール 代表)

執筆者の紹介

久世浩司 

ポジティブサイコロジースクール代表
応用ポジティブ心理学準修士(GDAPP)
認定レジリエンス マスタートレーナー
 
当スクール代表の久世浩司はポジティブ心理学レジリエンスを専門にしています。慶應義塾大学卒業後、P&Gに入社し、その後は社会人向けのスクールを設立。レジリエンス研修認知向上と講師の育成に取り組んでいます。NHK「クローズアップ現代」や関西テレビ『スーパーニュースアンカー』などでも取り上げられ、著書による発行部数は20万部以上。研修・講演会の登壇は上場企業から自治体・病院まで100社以上の実績があります。
 

主な著書
『「レジリエンス」の鍛え方』
『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』
『なぜ、一流になる人は「根拠なき自信」を持っているのか?』
『リーダーのための「レジリエンス」入門』
『なぜ、一流の人は不安でも強気でいられるのか?』
『親子で育てる折れない心』
『仕事で成長する人は、なぜ不安を転機に変えられるのか?』
『マンガでやさしくわかるレジリエンス』
『図解 なぜ超一流の人は打たれ強いのか?』
『成功する人だけがもつ「一流のレジリエンス」』
『眠れる才能を引き出す技術』
『一流の人なら身につけているメンタルの磨き方』
『「チーム」で働く人の教科書』