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ポジティブ心理学とは?

ポジティブ心理学を一言で言うと?


ポジティブ心理学は国内でも少しずつ認知されているようだ。でも「ポジティブ心理学は何か」をうまく説明できる人は少ないかもしれない。

私が応用ポジティブ心理学の学位を取得して、社会人に実用的なポジティブ心理学の教育を始めた頃は、限られた人しか知らないニッチな領域だった。それでも「働く人達に必要な知識とスキルだ」と信じて勉強会などでせっせと講師を務めたが、「ポジティブ・シンキング」と間違えられるとガックリ感じることもあった。

ただ、現在では当初と比べると良く読まれている翻訳書も増え、国民の幸福度への関心も徐々に高まり、ブータン王国のGNH政策も注目され、清水さんがプロデュースしたドキュメンタリー映画「Happy」も全国各地で上映され、ポジティブ心理学に関する認知度は以前よりは高まっているように感じる。

ポジティブ心理学が生まれたのは、当時学会会長だったマーティン・セリグマン教授により全米心理学会で演説された1998年。その二年後に研究者向けのジャーナル(論文集)「American Psychologist」にポジティブ心理学特集が組まれ、本格的な研究として注目を集めた。セリグマン教授とフロー理論で有名なチクセントミハイ博士によるポジティブ心理学研究を定義づける論文(Seligman & Csikszentmihalyi, 2000)は、今でも最も多く引用されているポジティブ心理学の文献の一つである。

Happier1.jpgシャハー著Time cover.gifTIME誌での特集Martin-Seligman-Authentic-Happiness.jpgセリグマン著作
続く2002年には、初期のポジティブ心理学の研究をまとめたセリグマン教授の「Authentic Happiness」(邦訳「世界で一つだけの幸せ」(書評はこちら))がベストセラーになり、2005年にはTIME誌で、その後経営誌であるハーバード・ビジネス・レビュー誌で特集記事が組まれる。さらには「ハーバード大学で最人気の授業」というキャッチコピーを掲げ、タル・ベン・シャハー博士の「Happier」(邦訳・同題、書評はこちら)がマスコミで話題となり、世界的なベストセラーとなった。

これらの書籍や雑誌を見ておわかりの通り、ポジティブ心理学の初期は「The Science of Happiness(幸福を研究する科学)」として世間の注目を浴びている。心理学者には「Happiness Researcher」と思われるのを避けたがる人が多い。とくにポジティブ心理学の研究者は「イエロー・スマイリーフェイス」をとても嫌う。自分たちは「ウェルビーイングを研究している」と言う人も多い。しかしながら、ポジティブ心理学が「ハピネス・ブーム」のトレンドに乗って欧米における社会的認知を得たことは間違いない。

ただ「ポジティブ心理学=幸福の科学」という説明は、間違ってはいないが狭い。ポジティブ心理学はもっと深く広い領域を研究の対象にしているからだ。

私は「ポジティブ心理学とは何ですか?」と聞かれたときに、いくつかの答えを用意している。
一つ目の返答は、セリグマン教授の言葉だ。それは

ポジティブ心理学は、個人とコミュニティが反映させる要素を発見し促進することを目指した、
人の最適機能に関する科学的研究である

という定義である。

Seligman2.jpgセリグマン教授Chris Peterson1.jpgピーターソン博士
しかし、この説明はビジネスを本業としている人にはわかりにくい。そこで(私のように)ポジティブ心理学を実用的に活かしたいと考えている人には別の答えを用意している。

たとえば、自己成長意欲の強い人には「従来の心理学が、人の心理状態をマイナス5からゼロに戻すとすれば、ポジティブ心理学の目指すところは、一般の健常な人の心理状態をゼロ近辺からプラス5やプラス8に高めることです」と伝えている。それにより、セリグマン教授の言う「最適機能」が発揮できるわけだ。

また人生やキャリアに関心が高い人には、私の敬愛するポジティブ心理学であるクリストファー・ピーターソン博士の言葉を紹介する。それは

ポジティブ心理学とは、人生を最も生きる価値あるものにするのは何かに関しての科学的な研究である

という定義である。

ピーターソン博士は、セリグマン教授の長期に渡る共同研究者で、楽観性の研究や強みと美徳の研究を行い、「いい人生」(Good Life)の追求をしてきた。そして、博士が「いい人生で最も大切なものは?」「ポジティブ心理学を一言で表すと何か?」と聞かれたときに、いつも答えていたのが以下の言葉だ。

Other people matter.

他の人々との関わりが重要。このシンプルな言葉のもつ意味は大きい。とくにピーターソン博士が若くして急死された昨年以降、私自身もこの言葉について考えることが増えた。

ポジティブ心理学の実証ベースの手法には、一人で行い幸福度を高めるものが多く発表されている(Seligman, etc. 2005)。しかしながら、家族・友人・仲間と質の高い関係性をもつことは、いい人生を送る上でも非常に大切なことがわかっている。幸福度がトップレベルの人達の属性や行動を調べた研究では、その多くの人達が一人で過ごす時間が少なく、親密性の高い人間関係を恋人や友人、家族などと保っていることがわかった(Diener & Seligman, 2002)。また、最近の感情研究でも、ポジティブな感情を他者と共有することのメリットが重視されている(Fredrickson,
2013)。


ポジティブ心理学の3つのレベル


ポジティブ心理学の研究は幅広いが、俯瞰してみると主に3つの基礎研究領域に分けられる。

まず第一に「主観的なレベル(Subjective level)」が挙げられる。これは、喜びやウェルビーイング、満足度や充足度、幸せや楽観性、フロー体験などが含まれる。このレベルでは、何か意義ある良い行いをすること(Doing good)や善良な人であること(Being a good person)以上に、良く感じる(Feeling good)が重視される。

次は「個人のレベル(Individual level)」である。これはいい人生(Good life)を送るために何が必要で、善い人(Good person)でいるためにはどのような質が求められるのかを見いだす研究領域である。これには、人の強みや美徳の研究、
愛と許し、勇気や忍耐力やレジリエンス(逆境力)、知恵や才能、創造性や独創性といった研究が含まれる。

最後に「集団またはコミュニティのレベル(Group or community level)」がある。組織(Institute)のレベルとも言われることがある。ここでは市民としての美徳や社会的責任、利他性や寛容性、仕事における倫理観や倫理観をもったリーダーシップなどが研究され、より善き市民と組織、地域の開発に向けて応用されている。


発展を見せるポジティブ心理学の応用領域


創始されてから15年のポジティブ心理学だが、以前は「新しい潮流」と呼ばれていたが、その後数多くの研究がなされ、現在では心理学の一分野として確立されている。

PP Mindmap1.pdfクリックして拡大その研究領域・応用領域は多岐を極め、今でも拡大を続けている。左図は英・イーストロンドン大学院で応用ポジティブ心理学修士課程の責任者を務めたイローナ・ボニウェル博士に紹介してもらった、彼女の院生が作成した「ポジティブ心理学マインドマップ」だが、以下に幅広い領域が扱われているかがわかるだろう。

とくにその中でも期待されるのが下記の応用5分野だ。これらは今年7月にLAで開かれた国際ポジティブ心理学協会世界会議で講演された100以上の議題の中で多く挙げられたトップテーマでもある。

  • ・ポジティブ教育
  • ・自己開発・コーチング
  • ・組織開発
  • ・ポジティブヘルス(感情研究も含む)
  • ・環境と行政政策

次の15年に向けてまだまだ発展を見せるポジティブ心理学。過去に大学などで学んだことはすぐに陳腐化してしまいそうで、継続学習が欠かせない。特に最近では米国だけではなく、ヨーロッパ勢の研究が盛んだ。英国やデンマークなど、ウェルビーイングに力を入れている国も多く、相性が良いのだろう。またアメリカでの研究をそのまま鵜呑みにしない批判的精神も持ち合わせている。来年7月にオランダで開かれる欧州ポジティブ心理学会議でも、興味深いトピックのエントリーが期待される。


2013年10月25日
ポジティブサイコロジースクール代表 久世 浩司

引用文献


Diener, E., & Seligman, M. E. (2002). Very happy people. Psychological science, 13(1), 81-84.

Fredrickson, B. L. (2013). Love 2.0: How Our Supreme Emotion Affects Everything We Feel, Think, Do, and Become. Penguin. com.

Seligman, M. E. P., & Csikszentmihalyi, M. (Eds.). (2000). Positivepsychology [Special issue] American Psychologist, 55(1).

Seligman, M. E., Steen, T. A., Park, N., & Peterson, C. (2005). Positive psychology progress: empirical validation of interventions. American psychologist, 60(5), 410.